hohi’s blog

初期仏教の勉強・実践とパーリ語の学習

「カッコ良さ」の秘訣と条件 〜「恥を知る人」の美学 〜 かやの木会館でのスマナサーラ長老月例法話メモ(2007年5月26日)

前書き

  • 人生は神話のようにはいかない←実際には認めたくない
    • ブッダが厳しく叱っている経典
      • 金持ちになりたければ、祈るのではない
      • 汗を流して働くべき
      • 祈って金持ちになれるのなら、誰でも金持ちになれる
      • 智慧がある人は、どうがんばるのか具体的に考える
      • うまく行かない時もある。→ 落ち着きなさい
      • 「誰かに何かして貰える」ということはない。そんな甘いことではない
      • 適切な努力によって、適切な結果が生じる(因果法則)
      • ただ生まれて死ぬだけのサイクルを乗り越える方法がある
  • シンデレラや王子様にはなれない
  • 短い一回限りの人生を失敗で終わってはならない
    • → なのに失敗する。簡単なはずなのに
      • 具体的でない、神様に頼る
      • 占い、迷信で生きようとする
    • 腕次第で成功できる
    • 今日一日を失敗してはいけない
  • 自分なりに充実感を感じて生きていたい
  • 後悔する人生は避けたい
  • 生きる目的をはっきりさせたい
  • その方法は、実行できて、現実的なものでなくてはならない。
    • 種(たね)として、生きることを成功する能力は誰でも持っている
    • これを適切に育てているのか、が大事
    • その「適切に育てる方法」を教えるブッダの教え・幸福の教えは隠してたり秘密にして はならない

ブッダが説く「カッコ良い」人とは?

腐る肉体で人を評価するのではなく、輝くこころの状態で人を評価するのです

美しい身体とスタイル

  • 明らかに「カッコ良い」でしょう
  • 美しい身体は生まれる時についてくるから、そうでない人は自己嫌悪に陥るしかない
    • これは差別につながる・差別は罪になる
    • 形はどうあれ、平等に見るのが立派な人格者のすること
  • 苦労して形を変えるのは可能でも、皆に出来ることではない(病気の場合は別)
    • なんで、そんなに身体を弄るのか ← 世間が差別するから
  • しかし、形は止まるものではない
  • 絶えず変化していく、それに対応するのも大変

身体は壊れる

  • Passa cittakataṃ bimbaṃ arukāyaṃ samussitaṃ

    Āturaṃ bahusaṅkappaṃ yassa natthi dhuvaṃ ṭhiti.

    (Dh 147)

  • 見よ --- 様々に作り為された[欲の]幻影を --- 寄せ集めの、傷だらけの身体を --- 病んだ、 妄想多きものを。そこに、常恒で、止まり住むものは、[何であれ]存在しない

    正田大観 [編・訳] 「ブッダの福音」から

  • 常に「見せる」ようにしなければならないし、不浄の液体が湧き出ている。皆欲しがるが、何 の実体もない。
  • Parijiṇṇamidaṃ rūpaṃ roganiḍḍhaṃ

    pabhaṅguraṃ Bhijjati pūtisandeho maraṇantaṃ hi jīvitaṃ.

    (Dh 148)

  • 老い朽ちた、この形態は、病の巣となり、壊れ崩れるものとして[存している]。腐敗の肉身 は、朽ち果てる。死という終極(おわり)あるのが、まさに生命である

    正田大観 [編・訳] 「ブッダの福音」から

  • 仏教では、肉体で評価しない; 肉体で人のことは分からない、だまされる

大富豪はカッコ良い?

  • 財産がある、家族があることは、人の自慢だが、仏教はその裏側を見る
  • Puttā matthi dhanammatthi iti bālo vihaññati

    Attā hi attano natthi kuto puttā kuto dhanaṃ.

    (Dh 62)

  • 「わたしには、子たちが存在する。わたしには、財が存在する」と、愚者は[所有の思いに] 打ちのめされる。まさに、自己は、自己のものとして存在しない(思いのままにならない存在 である)。どうして、子たちが[自己のものとして存在するであろう]。どうして財が[自己の ものとして存在するであろう]。

    正田大観 [編・訳] 「ブッダの福音」から

  • 考えることさえ、思い通りにならない→肉体させ自分のものにならない(子供だって、財だっ て)
  • 私には「アレもある」「コレもある」
  • しかし、思い通りに何一つ動かない
  • 振り返ってみると、自分が、財産・子供・家族に振り回されていたと気付くでしょう
  • 自分のこころ・身体さえも自分の思い通りにならない→ 何も自慢にならないでしょう
  • コキ使われるのは「カッコ悪い」です。

英雄の輝き

  • 国のために戦い・勝つ
  • 勲章を貰う
  • 国民に長く尊敬される
  • 皆憧れる

Yodhājīva Sutta

  • sutaṃ metaṃ bhante pubbakānaṃ ācariyapācariyānaṃ yodhājīvānaṃ bhāsamānānaṃ yo so yodhājīvo saṅgāme ussahati vāyamati, tamenaṃ ussahannaṃ vāyamannaṃ vāyamantaṃ pare hananti pariyāpādenti, so kāyassa bhedā parammaraṇā sarañjitānaṃ- devānaṃ sahavyataṃ upapajjatīti. Idha bhagavā kimāhā ti.

    (S. IV 308)

  • 私は師匠とその師匠から「武士が戦争に行き、敵を倒して職を全うすれば、死後勝利者の天界に 生まれる」と教えられてきた。この教えについての釈尊のお考えはどうでしょう

  • ブッダは三回断わる
  • 四回目にお答えになる
  • 戦いに挑む武士はこころをこのように戒める
  • 「この人は死ぬがよい、破壊した方が良い、なくなった方が良い、いない方が良い」敵 を人間として見ていない・マインドコントロールしている
  • このようにこころを育て、その通りに行為をする・人殺しをする彼は敗北という何の地獄に堕 ちる
  • 「人殺しが良い」は邪見。邪見者は死後地獄か畜生かのどちらかに生まれる
    • 「聖戦」? ← 全知全能の神を、たかだか60年程度しか生きない、簡単に死ぬ人間が守 る?
    • 地獄行きの道がカッコ良い訳はない

芸能人はカッコ良いか

  • Tālapuṭa が問う (S. IV 306)
  • 「芸能人が事実も嘘もおり混ぜて人を笑わせる。その芸能人は、死後Pahāsā天界に 生まれる」と教わってきた。それについて釈尊のご意見はどうか
  • ブッダの答
    • 「人々は欲に束縛されている。劇場に集まり、欲を興奮させるために、喜びのために観 察する。人々は怒りに束縛されている。怒りを興奮させるために…観察する。人々は無 知に束縛されている。無知を興奮させるために…観察する。」
    • 「(彼は)自分も放逸に陥いっている。芸人は他人を放逸に陥れる。その行いで、死後 Pahāsāという名の地獄に堕ちる」
    • 「芸をもって人が天界に生まれ変われるというのは邪見」
    • 「邪見を持つ人の死後の道は二つ: 地獄か畜生」
  • Tālapuṭa は泣き崩れる。ブッダが慰める 「私は三回断たのだよ」
  • Tālapuṭa 曰く「今まで、師匠達に騙され続けてきたことが悔しい」

神々に見えるカッコ良さ

  1. 両親を養う
  2. 目上の人を尊重する
  3. 優しい言葉使い
  4. 噂話をしない
  5. 欲張らない、分かちあう、布施をする
  6. 真実を語る
  7. 怒りに打ち勝つ

この人は善人であると、三十三天界の神々が言う

帝釈天が尊敬する人

  • 御者Mātaliが問う「人々はみなあなたに敬礼する。あなたは誰に敬礼するのですか」
  • Ye gahaṭṭhā puññakarā sīlavanto upāsakā, Dhammena dāraṃ posenti te namassāmi mātalī ti.

    S. I. 234

  • 「善行為をする、道徳を守る、正しい法で家族を養う在家の人に敬礼する」

    帝釈天は答える。

  • 御者Mātaliは「あなたが敬礼する人々は、世の中でも特にすぐれた人々でしょう。わた しも、あなたが敬礼する人々を敬礼します」

神々の差別意識

  • 帝釈天が出かける前にサンガに敬礼していた
  • 御者Mātaliが語る
  • 「彼らは、腐る肉体を持っている。腐っているもののなかで生活している。何時でも喉が乾 き、腹を空かせる。家さえも持っていない彼らを何故あなたは敬礼するのか」
  • Etaṃ tesaṃ pihayāmi anāgārāna mātali, Yamhā gāmā pakkamanti anapekkhā vajanti te.

    Na tesaṃ koṭṭhe openti na kumbhe na khalopiyaṃ, Paraniṭṭhitamesānā tena yāpenti subbatā, Sumantamantino dhīrā tuṇhībhūtā samañcarā,

    Devā viruddhā asurehi puthu maccā ca mātali, Aviruddhā viruddhesu attadaṇḍesu nibbutā, Sādānesu anādānā te namassāmi mātalīti,

    S. I. 236

  • 「彼らは何も持たない、蔵もない、頂いたもので身体を維持する。清らかな思考をする賢者で ある。沈黙を守り、自己制御できている

    神々は阿修羅と争い、人々は互いに争う。彼らは相手が敵であっても戦わない。怒りのある 世界で怒りなく、執着ある世界で執着なく生きている。そういう人々をわたしは敬礼するの です」

  • 御者Mātaliは「あなたが敬礼する人々は、世の中でも特にすぐれた人々でしょう。わた しも、あなたが敬礼する人々を敬礼します」
  • 「カッコ良い」生き方とは、神も羨む生き方 (とてもシンプル)
  • 俗世間の無知な人々に認められても面白いことはない

最高を目指す

  • Kiṃsūdha vittaṃ purisassa seṭṭhaṃ, kiṃsu suciṇṇo sukhamāvahati;

    kiṃsu have sādutaraṃ rasānaṃ, kathaṃjīviṃ jīvitamāhu seṭṭhan”ti.

    S. I. 42

  • 人にとって、最もすぐれた宝とは何か、人はなにを集めれば幸福になれるのか

    人にとって、最も美味とは何か、人はどのように生きると最高の生き方なのか

  • Saddhīdha vittaṃ purisassa seṭṭhaṃ, dhammo suciṇṇo sukhamāvahati;

    saccaṃ have sādutaraṃ rasānaṃ, paññājīviṃ jīvitamāhu seṭṭhan”ti.

    S. I. 42

  • 信(真理に対する確信)が最もすぐれた宝です。法を学ぶことで幸福になります。

    真理が最高に美味です。智慧に基いた生き方が最高の生き方です。

(俗)世間の「カッコ良い」 〜 世間の評価の裏

他人を評価する

  • ほとんど、他人を評価する
  • その他人が、どのように思っているか(考えているか)は関係ない・興味がない
  • その他人も、俗世間の評価に乗って「カッコ良さ」を演じて苦労することもある
  • 相手を評価している自分が、その他人の真似をしようとして、苦労したり失敗したりする
  • 「カッコ良い」人に支配され、使用されることもある

表(うわべ)を磨いてみても

  • 「カッコ良い」と認められる、またそのように思っている人のこころが汚れやすい
  • 相手(その人)を「カッコ良い」と思う人のこころも汚れやすい
  • 傲慢・嫉妬・怨み・欲・怒り・怠けなどが簡単に現れる (世間の「カッコ 良い」は地雷のようなもの)
  • カッコ良さは消えるので、落ち込んだりする
  • 世間のカッコ良さが人格を破壊する
  • 表面的に真面目に苦行者のしきたりを守っている(つまり格好つけている)ある行者にブッダが 説く:
  • 「思慮浅きものよ、結髪があなたにとって何になると言うのでしょう。皮衣が何になるので しょう。内なる欲の捕捉がある。あなたは外に見てくれを繕っている」

「カッコ良い」好かれる人

世間に貢献する

  • 世間に貢献する人は世間に好かれる
  • その生き方は羨ましく思われる
    • 「映画を見る暇もない。なぜなら、人の役に立っているから」
    • 尊い生き方
    • 周りの人の役に立つ生き方→ カッコ良い
  • 外見はどうあれ、世間に役立つ人を世間は評価する
  • 貢献する人になるのは難しくない
  • こころが汚れることもなく、攻撃を受ける心配もない。真のカッコ良い人は、この世でもあの 世でも成功を収める
  • その方法は?

ブッダのアドバイス

  • Cattārimāni bhikkhave saṅgahavatthūni.

    Katamāni cattāri? Dānaṃ, peyyavajjaṃ, atthacariyā, samānattatā.

    (A II 32)

    • 施し
    • 愛語
    • 有意義な生き方(利他)
    • 平等(同事)
      • 一番重要
      • 脳での認識とは→区別
      • (区別から「評価」するときに)差別につながる
      • 差別が入ると「頭が悪く」なる
      • 差別が入らなければ「頭が良く」なる
  • この四つを守ることで、世界一カッコ良い人間になれる
  • Imāni kho bhikkhave cattāri saṅgahavatthūnīti.

    Dānaṃ ca peyyavajjañca atthacariyā ca yā idha, Samānattatā ca dhammesu tattha tattha yathārahaṃ, Ete kho saṅgahā loke rathassāṇīva yāyato.

  • 車の車輪のごとく、この四つを「世に貢献」という。この四つが なければ、母は子からよく思われることも、父は子から良く思われることない

  • Ete ca saṅgahā nāssu na mātā puttakāraṇā, Labhetha mānaṃ pūjaṃ vā pitā vā puttakāraṇā.

    Yasmā ca saṅgahā ete samavekkhanti paṇḍitā, Tasmā mahattaṃ papponti pāsaṃsā ca bhavanti te'ti.

  • したがって、理性ある人はこの四つの項目を大事にする。彼らは大繁栄する。また世に褒め 称えられる。

あなたは(自分を)「カッコ良い」と思う?

生命を管理するもの

  • Dveme bhikkhave dhammā sukkā. Katame dve. Hiri ca ottappañca. Ime kho bhikkhave dve dhammā sukkāti.

    (A I 51)

  • 二つの善い事柄が世を管理している。その二つの事柄は、慚と愧である。この二つがなければ、 母も父も子、叔父も叔母も関係が成り立たない
    • 犬は交尾のときは、親でも兄弟でも関係ない

自己制御が出来ること

  • 最高にカッコ良い = 自己制御
  • これが出来る人は、いかなる場合も誘惑に負けることなく帝王のように生きていられる
  1. 悪を恥じる: 慚 (hiri)
  2. 悪を怖がる: 愧 (ottappa)

善い恥

  • 一切の悪行為、社会が非難する行為、良心が悩む行為、人間としてのプライドを傷つける行為 などを犯すことを、この上ない恥だと思うこと
  • 高いプライドを持って芯の強い人間として生きること
  • 例え脅されても、誘惑されても、プライドを守る自分の生き方を曲げないことです
  • 世間の無意味な悪になるプライドとは違います

善い臆病

  • 一切の悪を犯すことをに対して「臆病」になる
  • 悪いことをしようとすると震えて身体が動かない状態になるなら、正真正銘の善人
  • 「善いことなら、なんでもやる」性格が勇気です
  • これで「生命一カッコ良い」人間なのです
    • 神に褒められる生き方を目指すべきです

生ゴミは自慢の種ではない

  • 財産・健康・美しさ・権力・名誉・人気などは、自分のものにならない、全て捨てて死ぬもの
  • あったとしても、それの奴隷になってします→ カッコ悪い
  • 自分と一体になる道徳・智慧・人格などを身につけることが期待すべきこと、憧れるべきこと

世界一「カッコ良い」

  • 「カッコ良い」は「性格良い」です
  • これは親から相続するものではなく、自分で育てあげるもの
  • こころの美しい人は、何をやっても美しい
  • 太陽の如く他の生命に役に立つ生き方
  • そして、これは誰にでも出来ること

質問コーナーから

芸術家などで生前は評価されず、死後に評価されることがあるが

  • 生前評価されないこと→性格悪いこと、嫌われていたこと
  • 本人が死んでから、作品だけで評価→ 世間の評価は恐いもの
  • 人格者ならば、生前から評価される

施しと利他の違いは?

  • 施し: もの
  • 利他: アドバイス的なこと

帝釈天の挙げた七項目とブッダの四項目の関係は?

  • それぞれの立場が違うだけ。表現は違うが、重なっている。
  • ブッダは真理から四つにまとめている
  • 気をつけること: 噂の定義
    • 噂: 人の欠点を、その人が居ないところで話すこと
    • 善行為: 人の良い点を話すこと

批判を恐れて悪いことを恐れるのが「愧」か

  • 批判を恐れるのが「愧」ではない。
    • 批判に怯える→罪をごまかすこと、これ自体も罪
  • 悪いことをして、批判されるのは当然のこと、人の批判は受けるべきもの
  • 失敗は必ずある。その失敗をすぐに認めることが大事なこと
  • 自分の過ちを認めること→問題を早く処理することになる
  • 「火はマッチ棒にあるうちに消すこと」
  • 悪行為そのものを恐れるのが「愧」

行為が自己満足ではないのか、役に立っているのかを考えても分からない

  • 自分で判断しながらは行動できない、我々は悟っているのではないのだから。
  • 「自己満足かも知れない」、「役に立っているのか」を気にするのは良くない
    • ブッダの示した四項目を実行することを考える
    • 自分の考えを捨てる
    • ブッダの教えに従って実践するしかない(智慧のある人に従うべき)
  • 自己満足も全てが悪い訳ではない
    • 充実感はないと生きていいけない
    • 「まあ、がんばっているのではないかな」というのは、がんばる力になる
    • エゴで満足を得ようとするとロクなことにはならない

芸で欲・怒り・無知を興奮させずに笑わせたりすることは可能か

  • とても智慧が必要
  • 不可能ではないでしょう
  • 歌や踊りのなかに、勉強になること、役立つことを表現するなど、何かメッセージを伝えるこ とができるような表現など

メモを元にしているので、不正確な部分があると思います。

経典はメモしきれていないので、的外れな引用かも知れません。経典は Journal of Buddhist Ethic Tipitaka Project のパーリ経典を元にしています。