hohi’s blog

初期仏教の勉強・実践とパーリ語の学習

嫉妬しないこと、他人の美徳を喜ぶこと〜スマナサーラ長老法話メモ(2011年12月18日 オリンピック記念青少年総合センター)

〜muditāの実践からはじまる幸福論〜

 役に合わせた衣装替  

  • 一人でいると嫉妬があるか分からない: 発病しないと治療もできない
  • 嫉妬があることを発見することも大事な事
    • 真面目に生きている人(修行者)が自分の心に嫉妬が無いと思ってしまう
    • テストしないと(嫉妬があるか)分からない
  • 嫉妬(issā)は精神の衣装替
  • 基本的に生命は貪瞋痴の衝動で生きている
  • その中で怒りは多数の顔を持つ: 貪瞋痴の変装に気を付けないと発見できない
  • 主には、怒り dosa, 嫉妬 issā, 物惜しみ macchariya, 後悔 kukkuccha
  • その場の 状況にあわせて怒りは衣装替をする: 王様の衣装に騙されないで、化けていることを見るべき

 反抗的態度は共通  

  • 「自分」に状況・環境・人々が受けれ難い・合わない・気に入らない: その時の反応は「怒り」
  • 「自分」より他人が優れていると感じた時の反抗的態度は「嫉妬」
  • 「自分」が優位な立場で他にその能力・財産などが必要になる時に「物惜しみ」で反抗する
  • 「自分」の失敗に「後悔」で反抗する

 自分こそ偉い (もともとのポイント)  

  • 自分が唯一偉い存在だと思う精神的な病気・錯覚が原因(←気づかない)
  • 生命は平等と認めない・差別意識が強い・自我を肯定したい
  • 無明から起こる妄想によって人はその気になる
  • ブッダが説かれた真理を理解すること・実行すること以外は治療方法がない

 昔から知っている  

  • 昔からも「悪い性格」の一つとして発見していた
  • 昔からも知っているのに治らない理由は?
  • 貪瞋痴・その他の煩悩が心の本能
  • 本能的な問題を解決するには抜本的な改革が必要

 土台は壊せない  

  • 貪瞋痴は精神の基盤として機能する
  • 枝に座ってその枝を伐採することはできない
  • 生存欲と自我愛着のある生命は弱者を壊して生き続ける
  • 壊せない・潰せない強者に対しては嫉妬または恐怖感を抱く

 癖になる  

  • 本能があっても全ていっぺんに機能するわけではない
  • 状況によって悪い性格が現れる
  • 怒り・嫉妬・落ち込み等は繰り返し起こると心がそれに慣れてしまう
  • それによって「個」の性格が成り立つ
  • 簡単に破壊の悪循環が現れる

 世論  

  • 『嫉妬は良くない』という正論に説得力はない: ← 嫉妬の原因を発見していないから
  • 『嫉妬されることは怖い』など、嫉妬の結果を見て『悪い』と判断するが無くす方法については曖昧
  • 『欲・怒りは成長・発展の起爆剤になる』という邪見もある

 経典から  

  • Idha, māṇava, ekacco itthī vā puriso vā issāmanako hoti; paralābhasakkāragarukāramānanavandanapūjanāsu issati upadussati issaṃ bandhati. So tena kammena evaṃ samattena evaṃ samādinnena kāyassa bhedā paraṃ maraṇā apāyaṃ duggatiṃ vinipātaṃ nirayaṃ upapajjati. No ce kāyassa bhedā paraṃ maraṇā apāyaṃ duggatiṃ vinipātaṃ nirayaṃ upapajjati, sace manussattaṃ āgacchati yattha yattha paccājāyati appesakkho hoti. Appesakkhasaṃvattanikā esā, māṇava, paipadā yadidaṃ— issāmanako hoti; paralābhasakkāragarukāramānanavandanapūjanāsu issati upadussati issaṃ bandhati.

    (青年よ、ある女性あるいは男性が嫉妬の心で生活しています。その者は他人が受ける利益・尊敬・名誉等に対して嫉妬する、嫌な感情を持つ、嫉妬の関係になります。その者は嫉妬を優先した生活をして、死後不幸に、堕落した境地に、地獄に生まれる。もしも地獄に落ちること無く人間として生まれたならば、無力・無能の人間になります。他人の利益・尊敬・名誉などに心を痛める、悩む、嫉妬するなど嫉妬の性格は、青年よ、無力・無能の生命になる道です。)

    Majjhimanikāya > Uparipaṇṇāsapāḷi > 4 Vibhaṅgavagga > Cūḷakammavibhaṅgasutta (小業分別経)

 嫉妬のはたらき  

  • 過去生で嫉妬の癖があったならば、存在感の無い無能の人間になるという話
  • 嫉妬は心をどんどん衰えさせていく
  • 嫉妬するたびに人の能力が衰える・オーラも威力も無くなる

 始めたら終われない  

  • いったん嫉妬が起きたら限りなく成長させることは簡単に出来る
  • 嫉妬は他人の良い所・美徳を認めない・我慢できないという暗い気持ち
  • 他人を自分と比較する
  • 相手の美徳は自分より優れていると発見する
  • 自分の無能に対する怒りが嫉妬
  • (そもそも)生命は平等だが、同一ではない: 能力も様々: だから他の生命と自分とを比較すると、自分にはない能力がいくらでも無制限に見つけることが出来る
  • それらに対して嫉妬する癖が現れたら、嫉妬の気持ちは成長するばかり

 楽しくはない  

  • 嫉妬 = 「心が衰えていく」のは決して楽しくはない
  • 嫉妬の対象になった相手はどんどん成長するのに自分は衰えていく
  • さらに、嫉妬・憎しみ・恨み・怒りも増幅される: ← これを大量の怒りのエネルギーがサポートする
  • 自分からみんなが離れていく・煙たがれる

 危険性  

  • 嫉妬は恐ろしい精神病
  • 心の成長をストップさせるので仏教では軽く見ない心の汚れ
  • 自分と他とを比較すると māna (慢) という煩悩も起きるが、嫉妬ほどは破壊力がない: (慢を活用して)優れた人と等しいようになろうと努力するならば、成長する可能性もある
  • (それに対して)嫉妬は高濃度の核廃棄物のようなもの: 遣い道はない

 muditā : 嫉妬の解毒剤  

  • muditā(喜)の実践は嫉妬に対する特効薬
  • 仏教の高の実践方法も有効ですが、心理学的に「喜」は嫉妬の反対
  • しかし「嫉妬漬け」の人には実践できないケースもある
  • 嫉妬は、末期になる前に、初期段階で実践する方がよい

 1  

  • "基本的に自分が喜びを感じる訓練"
  • (例えば)『金がある』『家族は楽しい』『出世できた』などでも喜びは感じられる: しかし、これらによって心が清らかになる・成長する保証はない
  • (さらに)無常なので、財産・名誉などが無くなったら喜びも悲しみに変わる
  • これらの喜びによって得られる安らぎは安定しない
  • お釈迦様は喜びの対象として自分以外の生命を選ぶことを推奨された
  • まずは、自分という生命は自分の喜びを感じて経験する
  • それから他人を観察して喜びが生まれるようにする

 2  

  • 他人を観察する時、「喜びを感じる」という色眼鏡をつけて見る: ← 喜びの感情しか入らない・感じないようにする
  • 要するに敢えて心に或るバイアスをかける実践
  • 俗世間も『狭い見方』だと思うでしょう
  • 一切のバイアスを無くしてありのままに観察する方法を説く仏教に矛盾すると思うかも知れません
  • しかし、この見解は「生命の法則」に沿った正しい見解: 「生命の法則」とは、「生命は喜びを目指して生きている」ということ

 3  

  • あえて育てる見方なので「正見」ではなく、八正道の「正思惟」に属する
  • 喜びを感じると生命は成長する
  • 能力は向上する
  • 才能を発揮できる
  • 世の中の激しい変化に動揺することなく対応できるようになる

 4  

  • 身体も心も健康になる
  • 落ち着いていられる
  • 他人に好かれる
  • 自分に逆らう人、ライバルがいなくなる
  • 沢山の人々に囲まれて生活することになるが、それもストレス・苦痛にもならなくなる
  • ストレスと縁のない生き方ができる
  • 知らないことを皆喜んで教えてくれるようになる
  • 記憶力・理解力はスピーディに向上する
  • 集中力が向上する
  • 智慧が徐々に現れる
  • こころの汚れが徐々に少なくなる
  • 解脱の門は開く

 5  

  • まず自分が気に入っている何人かを選ぶ。一人でも可。
  • 人間がいないならペットでも他の動物でも良い
  • その生命の良い所を思い浮かべる、心の中で微笑んでみる
  • 次に、その相手がもっと幸福になったら良いな、と思う

 6  

  • (初期段階では) 相手を選ぶ時は気をつける
  • 性欲・愛着を引き起こす相手を避ける: 性欲・愛着を引き起こす相手に対しては、微笑むどころではなくなる(伴侶はよくない・我が子も対象にしないほうがよい)
  • 無垢の微笑みが起こるような相手を選ぶ
  • そんな贅沢が言えない場合は、感情を控えて冷静に見られるようにする

 7  

  • 選んだ相手の美徳・良い所・気に入っている所・長所ばかりを敢えて思い浮かべる
  • 微笑んでみる
  • 短所が見えても直ちに無視する
  • 短所より長所を拡大してみる
  • 相手が喜びを感じている事柄を調べて、同じ感じ方になるようにして微笑んでみる

 8  

  • 徐々に対象になる生命の数を増やしてみる
  • 「友達の友達は皆友達」という方式
  • 「吾子の仲間は皆我が子と同然」というように人の数を増やして心で感じる喜びを増大させる
  • この方法はリミットになるまで続けるべき

 9  

  • 親しい関係がない生命の美徳も感じるように、と次のステップへ進む
  • 例えば、公の場・集会場・電車・コンビニ・デパートなどで人と話をしてみる
  • なにか楽しい短い会話・挨拶・冗談などを言ってみる
  • 自分の関係ない人々も観察して「美徳発見の探検」をしてみる
  • 自分のことのように喜んでみる

 10  

  • 智慧の登場
  • 関係ない人々・生命にも各々の美徳があると発見できたところ
  • 結局「生命は平等」
  • 「嫌な生命は存在しない。皆、何かしら美徳がある・可愛いところがある・評価することが出来る」
  • この事実を身をもって理解する

 常識ではない  

  • この方法で感じることが出来る喜びは尋常でも常識でもない
  • 普通の人間に普通に経験できるものではない
  • 一般の人は突然大喜びを感じたら気を失ったり泣き崩れたりする: ← 耐久性のない・脳に処理ができなくなったということ

 常識を超えて  

  • ブッダの実践方法は完全に安全に徐々に喜びを感じる範囲と量を増やしていくもの
  • 無量の生命を認識して喜びを感じるようになると常識の範囲を超える
  • こころはボロボロの肉体から離れて機能するようになる
  • これはsamādhi(定)という境地

 もったいない  

  • これほど簡単に究極的な喜びを感じられる方法があるのに
  • 世界から虐め・虐待・差別・嫉妬・憎しみ・ストレスをなくす方法があるのに
  • 「全知全能」のように生きられる方法があるのに。
  • 人間の能力を超越できる方法があるのに。
  • 誰にでも実践できるのに。

メモを元にしているので、不正確な部分があります。(必ずしも長老がお示しになったパワーポイント の内容通りではありません。)