Introduction to Pali レッスン10のまとめ
未来時制
- 未来(bhavissantī)時制の動詞は、現在時制と同じ語尾変化をする
- ただし、強形式の 語根を持つ語幹に接尾辞issを、また第七類動詞の場合は 普通はessをつける
- 動詞の未来時制・受身は、受身形の語幹に同じ接尾辞をつけて、同様に語尾変化する
gam | gamissati | (彼は)行くでしょう |
dis | desessati | (彼は)教えるでしょう |
bhū | bhavissati | (彼は)〜であるでしょう、いるでしょう |
labh | labhissati | (彼は)得るでしょう |
saṃ-vi-bhaj (しばしば行くこと) | saṃvibhajissati | (彼は)分かちあうでしょう |
未来形が表現すること
- ほとんど確実であることの表現(特に、bhavissatiは多くはこの意味)
- 仮定法的な未来
- 確定したこと
- (一人称で)決定、決意
- 自然法則に従うことや、(先天的な、または後天的な)習慣(癖)
- 後悔や非難の感情的な様子を表現することにも使われる。
- 憤慨(または非難)も未来時制で表現される。
- 普通は kathaṃ hi nāma … 「いったいどうやって(彼は)… (しよう )というのでしょうか」という言い回しで始まる。
- 困惑、驚き、不思議に思うことも表現することがある。
- 例) kim ev' idaṃ bhavissati 「これは何があり得るでしょうか」「これ(の中身は)何でしょうか」。
属格 (ジェニティヴ Gen.)
- 第六格つまり属格(chaṭṭhī, sāmin)は普通、二つの名詞の間の関係 (sambandha)を表現する。
- 呼格を除く他の格は全てkāraka (「働き」の)格としてグループ としてまとめられる。なぜなら、それらは普通は動詞(動作)と直接につながっているから。
- よく属格は「〜の」と訳されて「所有」格としての働きをする。
- 二つの主要で特徴的な用法が区別される:
- 「所有者」(sāmin)を示すこと
- その単語が一部(avayava)を差し示しているものの全体を指すこと
- これらのうち、所有を示す属格がより頻繁に使われ、多くのニュアンスの違う意味を 持つ
- 二つの主要で特徴的な用法が区別される:
主格 | 属格 |
loko | lokassa |
lokā | lokānaṃ |
cittaṃ | cittassa |
cittāni | cittānaṃ |
kathā | kathāya (単数形: 具格と同じ), kathānaṃ (複数形) |
bhagavā | bhagavato |
rājā | raṅṅo |
ahaṃ | mama, me(前接的な形) |
mayaṃ | amhākaṃ |
tvaṃ | tumhākaṃ |
(e)so と tad | (e)tassa |
sā | tassā |
teと tāni | tesaṃ |
tā | tāsaṃ |
ayaṃ | assa または imassa(男性名詞) |
assā または imassā(女性名詞) | |
ime | imesaṃ |
imā | imāsaṃ |
bhavaṃ | bhoto |
- 普通は、属格の単語は、その単語が関係する単語のすぐ前に位置する: raṅṅo thūpo 「王の記念碑」。
- 所有を示す属格の構文は、英語での動詞「〜を持つ」を使う構文に相当することがし ばしばある。
- (パーリ語では、「〜を持つ」は動詞ではめったに表現されることはなく、ほとんどいつ も属格で表現される)。
- 文にもし他の動詞がない場合は、動詞「〜である」(hū)を使う:
- idaṃ assa hoti、文字通りには「これがある彼の」つまり「彼はこれを持って」。
- このタイ プの慣用句で頻繁に使われるものには、tassa evaṃ hoti … (または ahosi など)があり、これは動作主によって考えられたことを 直接話法で伝える。意味は、文字通りには「このようある(あった)に彼の」、つ まり「彼は…という考えを持って」「彼はこのように考えます、…と」
- (レッスン8でも指摘したように)ある慣用句が (時間の)期間を表す単語の属格 + accayena であるとき、その慣用句が表現するのは、何かがなされた後で(または、なさ れている間の)経過した時間。
sattāhassa accayena … pabbajissāma 「…の一週間後、私達は先に進 みます。」
- 似た慣用句は mama + accayena = 「私の後で」、これは「私が死んだ後で」「私の 死parinibbānaの後で」の意味。
- 名詞間との単なる関係のとても一般的で包括的な性質のおかげで、正確さが不要な場所で属格が使える。
- それらの名詞は、分詞を含むので、分詞の動作の動作主か受け手を表現する属格(それぞれ、所 謂「主語的な属格」、「目的語的な属格」)の名詞の後の分詞が動詞的な機能(定型動詞: レッス ン7)を果たすことをとても頻繁に見かける。
- 形式的には、それらの構文は、上述の規則的な属格の型(sambandha)のもの。
- 昔の注釈者の解釈ではよく、分詞と同時に使われるkāraka格具格(動作主)、あるい は対格(受け手)の代用であると説明している
- 。この説明によって、後世の学者たちが、あたかも属格がkāraka格として使われる かのようにパーリ語に「主語的」、「目的語的」な属格を設けることになった。
- (中世のパーリ語文法学者らは、ここでの属格の用法は単なる他の格の代用であると 説明したり、または、---属格が関連するところの---必要な格の名詞の省略であると見なしたり する; 現代的な学者の中には、kārakaとsambandhaとの区別を単純化して無視してしまう 人もいる。)
- 「〜で満たされた」に関係する時は(cf. レッスン8)、属格は具格の代理としても見なされるこ とがある。形容詞(レッスン11)pūra「いっぱいの」(分詞ではないが、訳が示すよ うに分詞と意味あいは似ていru)といっしょに用いる例は:
kumbhiṃ … pūraṃ … suvaṅṅassa = 「つぼ … いっぱいの… 金で」
- 属格は、piṭṭhito 「後に」、 purato 「前に」「〜の前で」、antarena 「〜の間で」 といった特定の不変語、といっしょに使われることもある:
- me purato 「私の前で」
- kāyānam antrena 「身体の中で」
- 「属格絶対」と呼ばれる構文では、名詞(または代名詞)の後に分詞が続き、いずれも属 格に語尾変化する。
- この単語にひとまとまり(ネクサス)は、文の他の単語とは全く違っていて、意味は 「(名詞が分詞をしている)〜の間」。
- 絶対ネクサスの動作主は、主となる文の動作主とは違う。
- 属格絶対は、しばしば、無視・無関心の特別な意味を持つ:
- 「(名詞が分詞をしている)〜のにかかわらず」、分詞が「見ている」「見つめてい る」時に「まさに彼らの鼻の下に」。
- telassa jhāyamānassa 「油が燃えている間に」((j)jhe 「燃え ること」)
- mātāpitunnaṃ… rudantānaṃ … pabbajito 「彼の両親が嘆くなか、彼は先へ行った」(つまり「彼らの嘆 きにもかかわらず」)。
- 属格絶対は、二つの主語を持つ文を構成するのに有用。しかし処格絶対(レッス ン16)で同様に構成された文の方がずっと頻繁に見かけ、また特別な状況に限定 されない。